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その時、時計が動いた

日記帳・感想など

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【ネタばれ注意】映画ジョーカーゲーム感想

2月くらいから公開していたジョーカーゲームを見て来ました。
前に見た映画の予告編で興味をもって、原作を読んでから行こう!と思っていたらついにこんな時期に。まあ見れなくなるよりはよかったと思います。(期待していたほどではありませんでしたが…)
追記にて感想。
(若干小説の内容も含みます。ネタばれ注意)

何というか、土曜朝イチに見に行ってみた割には非常に釈然としない映画だった。
上官に暴行を加えたとして処刑を命じられたところからD機関に編入、という最初のくだりを聞いた時点、次いで出てくる「大東亜文化協會」の看板を見た時点では「原作”XX”の飛崎の話かな?」と思ったのに、編入試験の話や陸軍出であることをD機関の人たちに嘲笑されるくだりは明らかに佐久間の話だし、かと思えば、その主人公がコピーするのは”幽霊”で出てきた加藤二郎で任務の相手もアーネスト・グラハム。しかし任務先は”魔都”の中国上海と思しき南国。で、なぜかその加藤二郎は途中で英国諜報部に捕まって尋問を受ける、このくだりは明らかに”ロビンソン”の井沢。(編入試験の机の上の本の題名も「ロビンソン・クルー」だった)
簡単にいうと、

短編集でちりばめられてた原作の要素を全部無理やり繋げて「新しいジョーカーゲームを作ったよ!」

と言われたような気分だった。おかげで混乱する上に終始不可解なことこの上ない。
まあおかげで見てる間は全く先の読めない展開だったのだけれども。そういう意味では楽しめたんだ。だがこの作品の釈然としない点は他にある

まず、原作、映画ともに上官である結城中佐は強調していたはずだ、
スパイは見えない存在。他人の注目を集めず、任務を行うのが優秀なスパイであると。
D機関で結城中佐が「死ぬな、殺すな」と研修生に教え込んでいるのは、別に命の尊さを教えたいからではなく、スパイであることを周囲に明らかにするような人目を引く行動は控えるべきという徹底した職業観念に基づいている。
この辺は自分も原作を読んでいてなるほど、と感心した部分であった。殺害と自決を最高の武士道とあがめる陸軍とぶつかるのも、この結城中佐の職業観念あってこそだといってもよい。
だがこの加藤二郎、
物語のっけから逃走する時に物は壊すし目の前に見張りがいれば容赦なく殴るし人目に付きまくる行動ばかり。挙句最後には火薬を建物中にばらまいて爆破すると言う、スパイにあるまじき目立ち方をしている
これではとても彼を優秀なスパイと呼ぶことなどできないだろう。そしてあろうことか、なぜかそれを誰も指摘しないまま終わる。当の結城中佐でさえ、加藤が如何に目だったか、今後どのようにこれまでの処理をするのかなどは離さない。まるで仕事が成功すればスパイとしての立ち振る舞いがどうであろうと構わないというように、事件の事後処理については一切触れられない。確かに原作のままを再現したのでは映画として動きが地味になるかもしれないという懸念はあるかもしれないが、今回のような原作をもってしてビルの爆破をぶち込むようなことは、画面作りのために原作の一番良かった所を切り捨てたのでは、と思わざるをえない。
これではスパイ映画ではなくただのアクション映画だ。

次にとにかく主人公の加藤二郎が「お前スパイに向かないだろ」ってくらい騙されやすい
特に深田恭子演じるメイドのハニートラップに引っ掛かるくだりなどはその象徴といってもいいというか…寧ろこの要素はこの映画に本当に必要だったのか?と首をかしげるくらいだ。
D機関で教育された以上は当然ハニートラップ(原作で示されるところのセックススパイ)についても当然理解があるはずで、それゆえに原作のD機関の者たちはクールに仕事をこなす。寧ろ騙されるより騙す側に立つことが多かった。それが、この加藤二郎はあっさりそれに騙されしかも騙されたと知った上でなお彼女を助けるようなそぶりをする。如何に情に脆いという補足があるにせよ、ちょっと主人公キャラすぎやしないだろうか。別にそういう展開を期待して見にきたわけではなかったんだが…
また、途中まで映画でも強調されていた「スパイは孤独である」という仕事の流儀についても、この映画ではかなり怪しい部分がある。加藤二郎が危機に陥った時は必ずD機関の2人組がやってきて助けを貸していた。あまつさえ最後のシーンでは3人で大団円てきな終わり方さえしている。
やっぱりこれもスパイ映画というより、アクション映画の王道をそのまま出したようなテイストだ。仕事の流儀と実際の行動にばらつきが大分あると感じた。

最後に映画本筋とは関係ないんだが、

主題が戦中のスパイ活動なのに主演が亀梨で主題歌がカトゥーンとはまた何とも軽いことで。


いや、亀梨については正直エンドロールで名前見るまで全然彼だと気付かないくらい演技が上手かったので気にするほどでもないんだが、あの陰謀渦巻くどろどろした展開を見た後爽やかカトゥーンソングが流れたとき、何か違うだろ、と思った人は多いんじゃないだろうか。何なんだ、あの曲を最後に持ってくることで何を演出したかったんだ…?カッコよさなのか?スパイがカッコイイという印象なのか?なら、やはり一般的なアクション映画のステレオタイプである。自分が期待していたような主題とはちょっと違っていた。これが釈然としない理由なのだと思う。「ジョーカーゲーム」を見に来て別のアクション映画を見てしまった。そんな印象だ。

気になった所を上げるとこんなところだけれども、スパイの視点から描く景色の切り取り方を映像化するとあんな感じなのか、と興味をひかれたところもちらほら。本物の外人の俳優さん使ってるのもいいですね。深田恭子が日本語のなまりある中国語喋るなんてなかなかないシチュエーションなんじゃなかろうか。それだけにもっとスパイの職業理念を徹底してほしかったという点が残念でならない。
原作は読みやすかったし面白かったのでもう一冊、作者の本を読んでみたくなりました。

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