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小諸藤村記念館 企画展「父から子に語りかける 藤村童話の世界」簡易レポ

長野県小諸にある藤村記念館。
今年(2019年)のゴールデンウィークに藤村好きが講じて初めて小諸を訪れてからというもの、そこで開催されている藤村文学講座を目当てに何度か私も小諸に訪れる機会がありまして、今回GW以来、企画展が更新されたそうなのでちょっと様子を見てきました。今回は、その簡易レポをしてみようと思います。
今回の企画展は「父から子に語りかける 藤村童話の世界」。藤村の童話を中心として集めた展示で、童話の書誌の他、藤村いろは歌留多や、藤村が子供たちにあてて描いたイラストなども展示されていました。

〇小諸藤村記念館とは
長野県小諸市・懐古園内にある島崎藤村の記念館です。
藤村は、明治32年にこの地に後に妻となる・冬子と共に引っ越してきて、現在の相生町付近に住まいを建てました。
藤村の記念館は、この小諸市と、岐阜県中津川市馬籠にある馬籠藤村記念館の二つがあります。今回ご紹介する小諸市の方は、藤村執筆の『千曲川のスケッチ』で度々出てくる懐古園内の中にあり、藤村の銅像と共に来る人々をもてなしています。
懐古園・藤村記念館は共に有料です。
(懐古園 大人一般・300円 藤村記念館200円)
(※共通券で記念館他、動物園、藤村記念館、小山敬三美術館、徴古館、小諸義塾記念館を巡ることもできます。こちらは大人500円)


▲小諸にある藤村記念館(左建物)。この時期は、紅葉が綺麗です。奥の方にあるのは『椰子の実』の詩碑。

〇企画展 「父から子に語りかける 藤村童話の世界」
島崎藤村は、詩・小説のイメージが強いですが、子供に向けて4本ほど童話を書いています。初版の発行順に『幼きものに』『ふるさと』『をさなものがたり』『力餅』です。このうち、『幼きものに』は70本あまりの小説のうち、11本が海外の作品を元にしたお話で、残りは藤村自身の話だそうです。『ふるさと』は、藤村が9歳までいた故郷・馬籠での体験談。『をさなものがたり』は前二つの作品からの再編集、『力餅』は藤村の生涯全般に渡る話を童話風に仕立て上げたものです。
今回、この企画展で私が注目したのは、藤村の童話と言っても、発行年によって何種類かの表紙があるという点です。今まで、藤村の童話に関する本を何種類か見ておりましたが、最終的にどれが初版本に当たるのか、というのは私は良く知りませんでした。これはどうやら出版社が異なる為に発生しているらしく、発行する出版社によって、挿絵や表紙など装丁の担当も結構変わっています。まとめると以下の通りです。

『幼きものに』
初版 大正6年 実業之日本社
昭和16年 研究社 挿し絵:島崎鶏二
昭和56年 筑摩書房「藤村の童話 1」 表紙、挿し絵:竹久夢二

『ふるさと』
初版 大正9年 実業之日本社 挿絵:竹久夢二
昭和16年 研究社 挿し絵:酒井三良
昭和54年 筑摩書房 「藤村の童話2」 表紙、挿し絵:竹久夢二
平成15年 ネット武蔵野 挿し絵:北島新平

『をさなものがたり』
初版 大正13年 研究社 挿し絵:竹久夢二
昭和16年 研究社「藤村童話叢書第三篇」挿し絵:酒井三良
昭和54年 筑摩書房「藤村の童話3」表紙、挿し絵:竹久夢二

『力餅』
昭和15年 研究社「藤村童話叢書第一篇」挿し絵:島崎鶏二
昭和54年 筑摩書房「藤村の童話4」:表紙、挿し絵:竹久夢二

上記を見ますと、挿絵の担当に関しては、次男鶏二だったり、竹久夢二だったりと、出版社ごとに異なることに気付きます。ちなみに、『をさなものがたり』の研究社版の挿絵担当の酒井三良というのは、福井県出身の画家だそうです。
装丁に関して、上記のうち『力餅』を除く三本はそれぞれ単行本として元になる本がありますが、『力餅』はそれまでの総集として研究社からの発行が最初になるようです。研究社版の装丁は皆一律に水色の表紙のもので、発行される順番も『力餅』→『ふるさと』→『をさなものがたり』→『幼きものに』という順番なんだとか。
家に帰って調べて気づきましたが、このあたりの詳しい書誌は、筑摩書房版『藤村全集』の別巻下の「書誌」の欄に載っていました。
詩集のときにも思いましたが、藤村関連の書誌は結構複雑なんですね;まさかの童話もそうだったという…
ちなみに、企画展ではこの他に、『眼鏡』が童話に含まれるかどうか、という議論があるというのが上げられていました。
『眼鏡』は『春』の焼き直し的作品でありますが、店先で売られていた眼鏡が、旦那に買われて諸国を旅する話が書かれた書き下ろし単行本です。文体こそ、やや少年少女向け(いわゆる少年物語)ですが、この作品を後に藤村が童話として位置づけることはなく、内容と作者の意識の差から、童話に含めるかどうかが考えられているそうです。
ちなみに『眼鏡』は、少年物語を書いてほしい、という出版社の依頼のもとに書かれた作品だそうですが、その依頼を受けた際、藤村は丁度こま子氏との関係があったので童話としがたかった、という趣旨もありましたが、内容が『春』っぽいのはそういう事情もあってのことなのかもしれませんね。

『眼鏡』が童話に含まれるかどうか、という話は、企画展脇にあった本多慶子さんの論にありました。本多慶子さんは、藤村の三男・翁助君の長女。 元福音館書店の編集者で、「ねないこだれだ」で知られるせなけいこ氏をデビューに導いた方なんだそうです。字数が多いですが、こちらも興味深いので是非見て頂きたいポイントの一つです。

小諸市立藤村記念館の企画展「父から子に語りかける 藤村童話の世界」は、2019年12月24日まで開催しています。

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