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その時、時計が動いた

日記帳・感想など

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皆のしている即興小説なるものを、我もしてみんとてするなり

http://webken.info/live_writing/index.php
こちらのサイトでやってるみたいです。

お題は「僕と瞳」タイトルは『うおのめ』でした。

30分チョイ越すくらいの執筆時間・・・
これとっても難しいけど早くネタ消化したいときの役にはたちそう
作品は追記からどうぞ。
アンタの瞳は綺麗だね、とはよく言ったもので、実際僕はいつも死んだような目をしている。腐りかけた魚という形容が最も正しいだろう。いつも生気がなく、虚空を見つめているような、暗く淀んだ目だと、僕自身は思っている。
「でも、アンタの瞳は綺麗だよ。濁ってても、地獄を見るような眼でも、私が綺麗と言うのだから、綺麗だ」
どうしてそんな風にいうのだろう。自己中心的な彼女の言葉に、何度そう思ったことか。でも彼女は「なんで」って聞くと「女は理屈じゃないのよ」ってはぐらかす。そうやって、男だとか、女だとかって言う隔たりを作って、僕に意見させてくれないなんて、ずるい。いつしかそうやって何度も僕を騙す彼女を、なんでもいい言いまかしてやりたい、と思うようになった。

休み時間に彼女の姿を見つけた。声を掛けようと思ったが、彼女は校舎の陰で、僕の知らない誰かに言い詰められているようだった。相手は女子だった。何かの相談だろうか、と思ったが、少し楽しい雰囲気とは違う、暗くて重い空気が漂っていた。相手の女子も、ぐいぐいと彼女に迫っている。よく分からなかったが、僕は最初の判断通りに、声を掛けてみることにした。
女の子たちから離れてこちらにやってきた彼女は、いつもとは違うなぜかよわよわしい足取りだった。「どうしたの」と尋ねても、「何でもない」と言い張った。それから俯いていた顔をあげて僕の瞳をじっと凝視した。
「今日も、アンタの瞳は綺麗だよ」
何が言いたいのか分からなかったが、いつも通りに「いや、今日も僕の目は死んでるよ」と返しておいた。

次の日の休み時間も、彼女は校舎裏の陰で僕の知らない女子に話しかけられていた。今度は人数が増えていた。二人や三人じゃない。全部で六人くらいいる。
僕はまた嫌な感じがして、彼女に声を掛けた。周りの女子は僕がいると気付いた直後に、また蜘蛛の子を散らすように去って行った。去り際に、彼女の方を見て、くすくす笑う子がいたような気がした。
よくわからないけれどなんだか気分が悪かった。僕は彼女に「あいつら何なんだい。君の知り合いかい」と尋ねたけれども、彼女は首を横に振るばかりだった。
「それより、今日も綺麗な目をしてる」
そんなことないよ、と言おうと思ったが、なぜかそういう気分になれなくて、何も言い返せなかった。

あるとき体育の時間の男子更衣室で、奇妙な話を聞いた。彼女とは小学校からの知り合いらしい。
「お前さ、あいつのこと知ってる? お前のこと見て、ずっと綺麗な目をしてる、って言ってるだろ。おかしいよな、お前いつも死んだような目してるのに」
「そう言ってるんだけどね、全然聞いてくれなくて」
はは、とそいつは笑って、あいつらしいな、と頭を掻いた。
「まあ、あいつ変だけど、ちょっと我慢してやってくれ。あいつ、ちょっと昔から奇行が多くてな。そのせいで、周りの女子からすげえ偏見喰らって、苛められまくってるんだわ。抵抗すりゃあいいのに、っていうのに、“そんなことよりも、私よりも綺麗な目をしている人を探す方が楽しい”って言って聞かないんだよ。あ、意味分かるか?」
「ごめん、全然わかんない」
素直に言うと、そいつはまたははっと笑った。
「つまりな。あいつは自分より近しい場所にいるお前が、自分より綺麗な、死んだような綺麗な死相の溢れた目を持ってる、って言いたいのさ。お前もあいつも、そういう意味では同類なんだよ」
またちょっと意味の分からないことを言われた。僕はまあ、言いたいだけ言わせておけばいいや、と更衣室で体育着のバッグを開いた。中身は、空っぽで、なにもはいってなかった。これじゃあ、今日の授業は受けられそうにない。さっきまで僕と話していた奴が更衣室からけらけら笑いながら出て行って、一緒に他の奴らも出て行って、僕だけ一人、更衣室に取り残された。
まあ、いいや。僕は死んだような目で体育着のバッグを閉じた。

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女性
誕生日:
1991/09/29
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アニメ鑑賞、ペーパークラフト、パソコン、読書
自己紹介:
文学・アニメ・映画そのほか、長話がしたくなった時に利用します。
漫画、小説、ラノベその他とにかく本の感想は本棚のブログパーツの「ブクログ」の方に書いてます。作品の好みはそちらを見るのが早いです。

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