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日記帳・感想など

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文豪達のカフネ(藤村編)を史実と原作の観点から検証してみた






買ってしまいました、文豪達のカフネ ver.2 園原藤村編

最近島崎藤村を始め自然主義の文士たちの本を少しずつ読んでいたのですが、
島崎藤村にハマりすぎるあまり色々な媒体での島崎藤村を漁っていて、本人の著作・同時代評・研究本やらサイトやら数限りない情報を集積していた結果、ネットで偶々流れて来たこのドラマCDにも行きつきました。

始め見たときの衝撃と言ったら「何だこれは…!?(笑)」でした。
まず題材が『新生』です。
『新生』は大正8年、42歳になった藤村が、姪との近親姦を犯して子供を身籠った彼女を自宅に残して渡仏した件を作品に表し、世間に公表したことで話題になった作品。

日本の自然主義の最大の告白小説として、藤村の作家的態度の真摯さを讃える人がある一方、
モデルとなった彼の姪(島崎こま子氏)が実在していることから批判的な目を向けられた作品でもあります。

発表は大正8年前後で、当時の文壇や社会からも賛否両論を大いに食らった作品ですが、
「それを題材に乙女向けドラマCDを作ろう」という発想にまず驚かされました。
このシリーズ、狂気の末に行きつく愛…というのがテーマらしいのですが、そもそもこの事件を知っている人が果たしてどのくらいいて、そしてどのくらいの人が原作を読んでいるのか。
ビジュアルとドラマCDの要素だけを抽出して、元の『新生』を勘違いしやしないか。
また、このCDを手に取って島崎藤村=新生事件の人、というイメージが蒸し返されるばかりになってしまわないか。

そのあたりがとても気になって、情報が流れて来た直後に気になって思わずポチってしまった次第です。
自分も最近まで島崎藤村は『破戒』を書いた人くらいな認識でしたが、各作品を読み進めていくうちに『新生』にもたどり着き、そして聞いていたよりも『新生』が男の葛藤と女の情念に満ちた作であることに深い感銘を受けました。よくできている作だなあ、とも。
なので『新生』を題材に、と言われて食い付かないわけがありませんでした。
何かまんまと乗せられた!否、私は自ら波に乗った!その姿、愚かしくも自ら地雷を踏みに行く兵士のごとく。

そしてわかってはいたのですが乙女全力な作でした…所謂R-18的な。
何と言っても園原さんが喘ぐ喘ぐ…(スミマセン)これ、いわゆる女性の抜きゲーという奴でしょうか。
ただ、描かれる内容の創作性が高いため、そもそもあまり知られていないであろう『新生』と藤村の史実的な立ち位置に関心を持つ者として
思わず比較プレゼンしたい欲求に駆られてしまいました。

ということで、折角なので島崎藤村原作『新生』と史実などと、本作との違いを比較してみました。
これ、文学カテにしようかどうか悩んだのですが、語ってることが十中八九文学のことなので一応ここに入れておくことにします。

このCDを手に取ったオトメに、これは原作のパロディからさらに創作を用いたフィクションである、という認識を持っていただくと同時に原作の『新生』と新生事件について、少しでも知識を深めていただければ幸いです。

所謂ただのネタにマジレス系のお話であって、同ドラマCDの制作サークル様への誹謗・抽象等、他意はございません。

※以下、ネタバレ注意。ネタバレしかございません。
※本作の内容にはR-18要素が含まれます。18歳未満は…そもそも本作に手を出さないはず、と信じます←


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田山花袋記念館-KとT展について

文学に立ち返って色々と旅して回ることが多くなったので見聞録的に記念館のお話をまとめるためにカテゴリ独立させました。以後文学関連の話題で長くまとまった話はここでします。
ここでは調べたことやら文学について感じたことやら、分からないことのまとめとして利用するので必然的にマニアックな話題が多くなりますが、面白がってるんだなと思っていただけると幸いです。
文学のカテゴリとしては、島崎藤村を贔屓気味に最近ハマった自然主義文学周辺についてとなります。
まとまりのない話については逐次Twitterで呟きます。(多分頻度はそっちのほうが高い)


さて第一回は田山花袋記念館企画展示-開館三十周年記念特別展 KとT展についてです。



(いきなり贔屓の藤村ではなくて花袋なの?と思われるかもしれませんが、当方、実は花袋の記念館が一番近くて訪れやすいのです。悪しからず。。)


田山花袋記念館は群馬県館林市にある文学記念館は月に一度、第一日曜日に無料開放され、このタイミングで14:00から30分程度解説会を行っています。
解説員の方曰く、通常はマンツーマンのレベルでの解説だそうですが、本日はなんと約20人もの来訪者がいる盛況ぶり。事前にSNSでの拡散やこれまでのお客さんの口コミ効果もあるのか、集まったお客さんを前に解説員のお姉さんも驚いておりました。これだけの大人数は初めてなので、少し緊張していたとか(笑)
(参考までに五月に私が記念館を訪れたときは館内には本当に私一人しかいませんでした。私も今回の盛況ぶりには大変驚き。若者とネットの力ってすごい)


写真では見づらくなってしまいましたが、LINE風の文章で広告には独歩と花袋の会話が書かれています。

田山花袋「やあ、国木田君。どうやら今度、僕たち二人の友情にフィーチャーした特別展が開催されるようじゃないか。」
国木田独歩「えっ、本当かい? 僕らは最近ゲームやマンガでも何かと話題になっているからね。」
田山花袋「僕たちの出会いや、君が書いたゲームに登場する手紙も紹介されるんだ。」
    「君のお信さんへの熱烈なラブレターも公開されるみたいだぞ。」
国木田独歩「なんだって!そりゃ大変だ!」
田山花袋「10月21日(土)から12月3日(日)までの開催だよ」

なんともコミカルな会話ですね。(笑)

30分しかないので今回は企画展の方の説明が主です。特に解説は、独歩の人生から始まり、花袋と出会うまで、そしてその死後、花袋が仲間を集めて全集を編纂して印税を遺族に届けるまでの流れでした。

〇企画展の見どころ
独歩の出生については諸説あるそうですが、花袋記念館の解説では現在定説である国木田専八氏の実子であった説を採用しています。
解説を聞いていて、いくつか目を引いたところ、印象に残ったところを中心に、補遺としてデジタルコレクションの参照を記載します。


・『愛弟通信』による躍進
明治27年10月、日清戦争の従軍記者として戦地に派遣された独歩は、戦況を弟の収二に向けてその様子を伝える体の文体で、『愛弟通信』にその様子を書き記します。
身内に向けた体の描写は臨場感がたっぷりで、これにより国木田哲夫の名は一躍世に広まりました。『愛弟通信』は、明治27年~28年に「国民新聞」にて連載され、独歩没後明治41年に刊行されることになります。
通常は県立神奈川近代文学館に所蔵されていますが、本企画展で見ることができました。赤い表紙に金の箔押し文字が装飾されている装丁です。
なお『愛弟通信』本文は以下、国立国会図書館のデジタルコレクションで閲覧が可能です。
愛弟通信


・信子との悲恋
田山花袋『東京の三十年』にもしばしば「お信さん」として大失恋を経験した相手として現れる独歩の最初の妻、佐々城信子。日本基督教矯風会の幹部の夫妻の長女として生まれた彼女は、夫妻が主催する晩餐会で独歩に出会います。
「令嬢の年のころ十六若しくは七、唱歌をよくし風姿素々可憐の少女なり」というのが独歩の信子に対する第一印象で、その心躍る恋心が、独歩の『欺かざるの記』という書に記されています。

『欺かざるの記』についても、デジタルコレクションで閲覧が可能です。
欺かざるの記
これは全文500P超となる大ボリューム。その分独歩の私生活を垣間見ることができるということでしょうか。

当時、女性は人前で唱歌を唄うことはあまりしなかった為、この堂々たる姿が独歩の印象に残ったようです。以降二人は互いに惹かれあっていきますが、これに対して夫妻は猛反対。それでありながらも恋の進展を止めることはできず、信子は佐々木家から勘当されるという厳しい条件のもと、独歩と結婚します。
結婚に至る前、独歩は単身北海道で信子を待ちますが、あまりにも彼女が自分のもとに来るのが遅いために、何度も手紙を送っていました。その時の直筆手紙が何通か本展示で掲載されていました。本文の中でその熱烈ぶりが分かるのが、直筆で展示されていた以下の3通。

①明治二十八年 九月十八日 国木田独歩書簡(佐々城信子宛)
②同      九月二十三日
③同      十月三日

①は室蘭に到着し、道中もあなたと離れることは苦しかった、早く来てくれ、という趣旨の手紙。
②は早く結婚して北海道で一緒に生活したい、という旨を記した手紙。
③はあまりにも信子が自分の所に来ないので、絶望してしまった、という趣旨の手紙。

②もものすごい密度の文章なのですが、特に面白いのが③で、これは他の展示資料の独歩書簡に見られないほどの取り乱している様子がうかがえます。

「果たして絶望は来りぬ。よし、然らば絶望を受けん。誓ひし愛の言の葉、凡て致れよ。
御身は余を背き去る也。
余を捨て去る也。
余は信ずと称す。されど余を信ぜざる也。(中略)
去らば。去りし者は追はず。否、哀哉、追ふ能はず。
森!涙!凡て夢なりしか。されど恨みもせじ。余は愚者なれば也。
虚栄は満ちぬ!
見よ/\/\
余は志ば/\言へり。ブロークンハートと。果たして然り。
(後略)」

完全に自分が捨てられたと思い込んだ男の人の心境です。(笑) !が多いこともさることながら、「私はあなたを信じていたのにあなたは私を捨てるのですね!」と書いてしまうあたり、よほど愛していたことが分かります。
独歩の字は前後の文字ときちんと離れているので比較的読みやすいのですが、この文の「ブロークンハートと。」というのが現代人にもしっかり読み取れるくらいに書いてあるので面白いです。
結婚直前はこんな様子ですが、付き合っている間は当時夫婦同士でもめったに手をつないで歩くことがなかったところを歩いたり、抱擁やら接吻やらという言葉が飛び交う熱々っぷりであったようです。

さて、結婚後の独歩との日々は、基督教の習慣に従った窮乏生活でした。独歩にとっては生活習慣でも裕福に育った信子はこれに耐えかねて、失踪してしまいます。そして半年足らずで離婚となってしまうのでした。

・花袋との出会いと友情
花袋との出会いについては、『東京の三十年』の「丘の上の家」で触れられている通り、この離婚騒動があった後、弟収二とともに渋谷の家で暮らし始めてからとなります。
二人は文学を愛好する心を同じくして出会った当初からあたかも旧知のように意気投合し、文学活動に精を出すようになるのでした。二人は特に流行していた西洋文学について、熱く語り合う仲となりました。
独歩は『源おじ』で小説家としての地位を確立してから、先の『欺かざるの記』の執筆を止めます。もう必要なくなったからとのことでした。
独歩は明治31年に榎本治子と再婚を果たします。翌年、花袋も太田玉茗の妹・里さと結婚し、博文館へ入社します。花袋の結婚にあたっては、独歩と柳田国男が協力し、彼の婚姻届けの証人となりました。(この時の証書も展示品にありました)

二人は小説家だけで身を立てられるようになるまでに編集者として働きますが、独歩が元々編集が好きであり引き続き『近事画報』でも編集を続けていた一方、花袋は受け持っていた博文館での編集の仕事が好きになれず、小説家一筋となって活動し始めました。

・独歩の晩年とその後
当時珍しかった絵や写真を用いた表現で大成功を収めた『近事画法』でしたが、その後終戦とともに『近事画法』の売り上げが徐々に落ちたことで経営が悪化。独歩は社の権利を譲り受けることになりました。新たに独歩社を設立しますが、経営状況の立て直しは叶わず、わずか10カ月で破綻してしまいます。
多忙と心身の疲労によって彼は当時の死病であった肺病を患い、東洋一のサナトリウム南湖院に入院。夫人をはじめ多くの人が見舞いにやってきました。『生』の執筆中であった花袋もその一人でした。花袋と小栗風葉を中心として編纂された『二十八人集』は、こうした独歩の窮地を救うために編纂された雑誌でまさしく彼らの友情の証でした。
明治41年6月、独歩は四度目の喀血によって絶命しますが、生前は「自分の死後も花袋がいれば家族は安心だ」と語っていたとのことで、その言葉通り花袋は彼の死後も多くの作品を世に出しました。折に触れて彼の死後も、度々花袋は独歩のことを評論や随筆に書いています。これはまさに二人の友情の表れと言えるでしょう。

・独歩&花袋の女性同士意外な関係
今回の企画展関連として『蒲団』のモデルである岡田美智代女史と独歩の前妻の佐々木信子氏が実は同じ女学院に3ヶ月だけ在籍していた、と紹介されておりました。
『蒲団』のモデル岡田美智代女史は2015年頃から女流作家としての再評価が進んでいるとの記事も館内にあり、彼女の新情報は今後も出てきそうです。

〇裏話その他

以下は今回のお土産です。



右端にあるのが今回の企画展示資料。一冊200円、20Pの冊子になります。
企画展資料については、ここに大体すべて書かれているのでファンは必見。恐らく開催期間が終了してまだ資料が余っている場合は、通販で取り寄せが可能となるのでご興味がある方は取り寄せてみてはいかがでしょうか。

特に独歩についての生涯のまとめ、独歩と花袋の生涯対比表は大変便利です。
左端奥にあるのが、今回の企画展で展示されていた独歩の手紙の翻刻資料です。
手紙の翻刻が読みたいというお客さんのために展示資料に対応する番号を振った状態で記念館の方がご用意してくれました。大変ありがたい限りです。

そして中央にあるものですが。




記念館お手製、花袋君シールです。(笑)

全3種類で、こちらは蒲団バージョン。ミノムシゆるキャラ花袋君です。とても愛嬌がありますね。こちらは記念館の受付でお声かけすると一人一枚頂けるもののようです。

先月、私は香川県高松市にある菊池寛記念館も訪れたのですが、その時もこんな感じのゆるキャラシールがありました。ネットでの噂を聞く限りだと、中原中也記念館も同じようにゆるキャラになっているようで、文豪のゆるキャラ化もいつのころからか流行しているようです。にしても和みますねこれ。途端に親しみやすくなります(笑)

10/28の群馬県民の日には「花袋君と写真が撮れるコーナー」という企画も催されていたようですが、そちらは何とこのゆるキャラではなく、コスプレしたリアルな花袋君が現れたようです。びっくり。

ちなみに今回の企画展のメインビジュアルにある花袋の写真ですが、これは独歩に合わせて一生懸命イケメンの花袋を探した、というわけではなく、単純に年齢を独歩に合わせたかったのだと、解説員の方がおっしゃっていました。
確かによく知る花袋の年齢は中年過ぎなので、独歩の年とは離れますものね。。

企画展に行くとまた本が読みたくなります。お土産を暫く堪能しようと思います。
ありがとうございました。

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文学の知識と味わい

最近、文学に対しての考えを深めるきっかけに出会ったので、個人的にメモしてみようと思う。

文学を知識としてとらえた場合、それは著作を味わうこととは対極に位置するとなりえる、という点についてのアレコレ。
これが最近3日くらい私の考えていたことである。私自身の身を振り返り、改めてこのことに気づかされた。(長くなったので畳む)

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文学部は大学で何をしているのか

文アル人気でTwitter上で知り合った方から、文学部って何やってるの?とご質問をいただきましたので、大学時代文学研究にいそしんだ人間がまとめて解説をしてみようと思います。

前もって言っておくと私の所属していた学科は近年統廃合によって学科が吸収合併されて無くなりました。
近年の大学の理系重用風潮により、徐々に文学部文学科は日本の大学から姿を消しつつありますが、それでもまだ一部の大学では文学の研究ができます。
本文は、その際のご参考までにどうぞ。

あとここでご紹介する文学研究はあくまで私の所属した学科と教授のお話なので、
大学や所属する教授によって研究の内容に差異があることは、あらかじめご了承ください。
また文学研究に触れるきっかけを、と書く内容ですのでガチで大学・大学院で文学を研究していた方向けにはゆるい内容です。現在研究している方は、他大の研究手法の一つのご参考としてください。

研究対象は明治・大正あたりの日本を想定しています。
海外文学・江戸以前の文学と、現代文学は対象外です。
(人伝に聞いている限りだと江戸以前は下記の内容に加えて翻刻(=くずし字を解読する過程)が入り、海外文学だと翻訳が入るイメージがあります。江戸以前だと写本がたくさんあるものもありますので、どの写本を使うのかによっても研究の内容が変わったりするらしいです)

あわよくばこれを読んだ文学に関心のある学生さんが、ご自身が文学研究に向いているのか銅貨を考える一助になれば幸いです。大学はお金がかかるところなのでやりたいことをあらかじめ知っておくに越したことはないと思います。せっかくやるからにはある程度中身を知っておいたほうがいいですよね。

〇レファレンス
始めに文学研究の導入・先行研究検索に役立つサイトをご紹介します。

〇CiNii
http://ci.nii.ac.jp/

…サイニーと読みます。
学生時代論文を探すときはよくここを利用していた、という人も多いのでは、というくらいメジャーな論文検索サイトです。私もよく利用していました。
「すべて」を選択して検索すると、関連するワードを含む論文が検索できます。
「CiNiiに本文あり」を検索すると、PDFで本文がある論文を検索できます。
後述する先行研究は、こちらで大体検索していました。もっとほしいなという場合は、論文内の参考文献を更にたどっていくことで芋づる式に情報を得られます。
文アルにハマった方は、試しに「CiNiiに本文あり」で推しの著作名や推しの名前を検索してみましょう。(笑)
文豪はたいてい有名な人が多いので先行研究も多くあったりして楽しいです。
CiNii上に本文がないものは、大学図書館の蔵書であったりします。
大学生の場合は大学の図書館の受付で依頼すればたいてい取り寄せてもらえます。

〇国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/

明治・大正期の刊行物を検索・閲覧できます。
詳細検索で「インターネット公開」にチェックを入れると、ネット上で閲覧可能な資料のみが出てきます。
ネットで見られる内容としてはかなり強い印象です。歴史資料もあるので歴史クラスタ向けにも重宝しますね。
「国立国会図書館限定」とあるものは、検索のみ可能な内容です。実際に国立国会図書館に行くことで見られます。

〇「日本近代文学」総目次
http://amjls.web.fc2.com/mkj_indx.htm
データベースではないですが、雑誌「日本近代文学」学会の会報目録です。
1964年以降の研究論文の電子データがDLできます。
文学の論文を身近に触れるきっかけとしていいかも。文アル文豪に関する研究もいっぱいされておりまっせ。

〇文壇論 資料目録
http://www.jliterature.com/bundan.htm
こちらはデータベースではないですが、文壇について論じた内容の目録です。
当時の文壇のアレコレが知りたいときに便利かもしれません。


上記で本文が電子版で載ってないものは、公共図書館を通じてお取り寄せ依頼する形となります。
地域の公共図書館にコピー(複写)の依頼をすると有料で取り寄せてくれますので、必要であれば依頼をしましょう。
※複写依頼詳細については、お近くの公共図書館にご確認ください。

〇作品研究について
さて、文学部文学科の研究内容です。
文学研究を行う手順は、以下の3つです。
1、原作を読んで読書感想文を書く
2、作品情報を調査する
3、考察する

1、原作を読んで読書感想文を書く
「は?文学研究って感想から入ってるの?それって個人の偏見バリバリじゃない?研究に持ち込んじゃダメな奴じゃない?」と思った方、大正解です。
しかし文学の本質は、結局のところ作品そのものが読者にどう思われるか、それに尽きます。名作は誰かが評価したから名作である、のではなく、およそ読者に何らかの共感を与えそれが広く伝わったからこそ名作なのです。それこそ時代に耐えうる作品は、現代人の我々が読んでも何らかの共感を得られるはずです。そして、どの部分に共感を得たのかは、その作品の普遍性を考えるうえではポイントとなりえます。
故に研究以前に、その本を楽しみ、嚙みしめるという意味では、読後の感想は実は重要なのです。
これは研究を始めてしまうと知識にかぶれて忘れがちになるものですので、作品を読んだらなるべく早めに書き留めておくのが良いと思われます。
勿論研究に入ったら論旨は感想に引きずられすぎないように、注意が必要です。

2、作品情報を調査する
次に調査の過程ですが、これは3つのフェーズがあります。
①書誌情報
…その作品の書誌情報についてをまとめます。
例えば書店に並ぶ文豪たちの本には、必ず末尾に底本が記載され、どの版の書籍から文章を引いてきたかが書いてあります。
これは調べていくと最終的に新聞だったり、全集だったり、同人誌の寄稿だったりに行きつきます。研究の際は、このどこが初出であり、その後何回改稿されたか、にも注目しその情報をほんの情報としてまとめます。
例えば、新聞小説で連載されていた小説と、同人誌にまとめた内容では、対象となる読者も単行本化した際の修正箇所も異なります。
新聞小説として書いた内容が単行本時には異なる表記や収録の内容であることもありますし、単行本化された内容でも版ごとによって加筆や修正があったりします。
修正や加筆は「なぜそのような内容となる必要があったのか」が研究考察の要素の一つともなりえるため、一度目を通さなくてはならないポイントです。

②語彙調査
…作品中に存在する語彙や慣用句で不明なものがある場合に調べます。作品を読んでいる間にピックアップするのが手っ取り早いです。作中に出てきた意味の分からない単語や慣用句、小道具などをネットや図鑑や辞書を使って調べます。
調べていくと意外なところに作品の展開のカギがあったりするので、この過程も必要なもののうちの一つです。
これを突き詰めると文学研究ではなく歴史に足を突っ込みますが、文学の場合は発表当時に読み解ける内容を理解できればOKです。浄瑠璃が出てきたからと言って実際に浄瑠璃を見に行く必要はありません。(笑・そういうのも関心があればやってみると楽しいですが)

③先行研究
…その作品に関して先人が研究したことをまとめる工程です。大抵の研究は雑誌に載っています。(有名なのだと『解釈と鑑賞』とか『國文學』とか/2016年に休刊となりましたが…)
上記レファレンスに記載のサイト等を使用して論文を検索し、その内容を読んでどういった研究が行われてきたのかをまとめます。
有名な文豪の作品ですと何百という先行研究の論文が出てくることもありますが、そういう論文たちもある程度の語りの切り口があるので、その論調ごとに内容をまとめます。
先行研究が少なすぎる場合は最初に当たった論文の参考文献をたどっていくことで芋づる式に情報を得ることができます。
なおここで深みにハマると、発表当時の作家自身の当時の生活や事件などに触れることがあります。多くの論文は、作者自身の体験から影響を受けたという内容で研究をしているものが多く、特に発表当時と時代が近いものほどその風潮があります。
作家論を見たい場合は、そのあたりの論文を見てみると楽しいと思います。

3、考察する
研究と銘打たなければ2の調査の部分だけで十分美味しいのですが、そこで終わる場合は調べ学習となります。研究である以上は、先行研究を受けて考えた、何らかのオリジナリティが必要です。つまりは先行研究とかぶらないように、ある程度の論旨を持った内容を書かねばなりません。
そこで生きるのが初見の感想です。
・なぜこの部分はこのような書き方をしているのか
・この展開はやや唐突な印象があるがなぜこうなったのか
・このシーンでこの小道具を提示する理由は何か
・この部分の登場人物の配置には何か意味があるのか
など、なぜかと気になったところを列挙し、考察しその答えを論文として書いていきます。
あるいは、2の調査を生かす方法もあります。先行研究で気になったところを列挙し
・この論文にはこのような問題点がある
・この論文のこの部分にはさらなる考察の余地がある
等を考えてその答えを自分で考えて論文として書きます。
これらは、ある程度の論理的展開が求められるところが難しいところです。理系の学問では、実験という大きな後ろ盾がありますが、文学は形がなく検証ができない分野ですのでうまく先行研究や調査の内容を用いて論じないと、感想の域を出ません。かといって先行研究と全く同じことを書いても新規性がなく、論文としての体をなしません。(これは文学以外の学問もそうではありますが)そのバランスをうまくとりながら、論文を執筆していくことになります。

余談ですが私の所属していた学科の研究では、作品と作者を別物ととらえる研究手法でした。
作者の経験が作品に影響を及ぼすのは当然なので、一緒くたに語る意味はあまりないという前提の教えだったかと記憶しています。なので実はあまり作家論や作家の文壇での立ち位置的なお話は詳しくなかったりします。研究は主に作品の各論に重点を置き、あくまで作品内での仕掛け等を検証する形での研究でした。

4、最後に
いかがでしたでしょうか。
文学研究と言っても、研究の枠組み自体は他の学部と同じではないかと思います。特に文系の学部の方はかなり近いことをしているのでは、と思います。
なお、研究は作家論でない限り個々の作品解釈に重きを置く傾向がありますので、文アル実装の人物そのものを知りたい場合は、本を買ったり記念館に赴くのが一番早いです。アクティブな方は博物館に来訪するのもよいと思います。
記念館の情報は、一般観覧向けにできている傾向にあるのでなじみやすく、また解説等も加えられているので読みやすいです。訪れた際には是非お土産に記念館の本を買って帰りましょう。
(かつて宮沢賢治記念館に行ってみたことがありましたが、その頃は人も少なく、学芸員のおじいさんが大変丁寧に賢治の作品を解説してくれました。)

番外:
①グーグル書籍検索について
文アルクラスタの強い味方といえば青空文庫ですが、実は本文検索がグーグルの書籍からできたりします。
うまくすればタイトルで見た時にはわからなかった推しの記述が見れるかも…?(笑)
グーグルの検索結果画面で「その他」→「書籍」で検索します。めっちゃ重宝。

②崩し字について
近代文学ではないけど一緒に崩し字も勉強してみたいんだけど、という方向けに崩し字アプリ-KuLA-をご紹介します。(とうらぶ通ってきた方は一時話題になったので知ってるかも)
こちらは京都大学大学院所属の方が完成させた現代人にもなじみやすい崩し字アプリです。

iphone版
https://itunes.apple.com/jp/app/kuzushi-zi-xue-xi-zhi-yuanapurikula/id1076911000?l=en&mt=8

android版
https://play.google.com/store/apps/details?id=yuta.hashimoto.kula

開発者の方のtwitter
https://twitter.com/yuta1984
監修の方
https://twitter.com/iikurayoichi

崩し字の学習の仕方は、崩す元となった漢字を覚えて判別できるようになることだそうです。
練習すれば博物館の古典資料なども読めるようになったりするらしいです。

最近はSNSのシステムを利用して「みんなで翻刻」なんてサイトもあるんですね。江戸文学クラスタ大歓喜では…時代すげぇ。
http://honkoku.org/

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1991/09/29
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